■神戸とオリーブ

 

 最近、日本でもフランスパンなどにバターの代わりバージン・オリーブ・オイルを使う人が増えている。健康に良いことから一気に広まった。

 オリーブというと小豆島産が有名だが実は、国産初は神戸なのだ。郷土史家落合重信『埋もれた神戸の歴史』や湊川神社の「日本最古・湊川神社オリーブ樹」の現地解説板などによると、明治6(1873)年、ウィーン万博事務副総裁だった佐野常民(つねたみ)が、オリーブを持ち帰り現・NHK神戸支局の北側付近にあった兵庫県立「神戸植物試験場」に植えたのが日本のオリーブ事始めだ。このオリーブは残念ながら伐採されて今はない。明治11(1878)年に開催されたパリ万博日本館館長、前田正名が仏国産オリーブ2000本を東京・三田(みた)育種場に持ち帰った。そのうち550本を神戸山本通り(今の北野ホテル〈川﨑造船所創始者川﨑正蔵邸跡〉付近に造成した「三田育種場神戸支園」に植栽した。明治15(1882)年、武庫離宮(現離宮公園)の庭園設計者福羽逸人(ふくばはやと)<男爵>がこのオリーブから日本初の塩蔵製品製造と搾油に成功。ついで明治17(1884)年、神戸支園は「神戸阿利襪(オリーブ)」と改称。その後、福羽は小豆島のオリーブの栽培と搾油を指導した。
 布引ハーブ園でも紀元前から人間の生活ともに生きてきた有用植物として何本か植えたが、その象徴としてロープウエイの山頂駅広場に開園当時、武蔵野美術大学教授鈴木久雄のオリーブの彫刻『錐形の時間』を設置した。「神戸阿利襪園」はすでにないが、オリーブは市民生活に浸透していった。神戸の街角でオリーブの樹をよく見かける。
 現在の元号は「令和」。穏やかな平和な時代であってほしいと願っている。ノアの方舟の鳩がくわえていたのはオリーブの枝―まさにオリーブは安全と平和を願う樹なのだ。 
知られざる神戸の樹として大切にしていきたい。市民団体が推進する神戸おこしの運動にエールを送りたい。

  ▲湊川神社のハーブ   ▲布引ハーブ園「推形の時間」